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ミムス

仕事を辞めてから出産まで、毎日時間がたっぷりあったので、
読書三昧の日々を送っていました。
あんなに没頭して本を読んだのは、
時間と自由を持て余していた大学生の時以来。
時間があると、厚い本でも一気読みできるのがいいですね。
朝、本の世界に出かけていき、
夕方、現実の世界に戻ってくるような生活でした。
ひとたびハマってしまうと、本を閉じるのがもったいなくて、
家に一人っきりなのをいいことに、本を片手にお昼ごはん、
なんてお行儀の悪いことも。

ミムス―宮廷道化師 (Y.A.Books)

『ミムス ~宮廷道化師~』
リリ・タール=作
大本栄=訳
小峰書店


モンフィール国の王子フロリーンは、敵国ヴィンランドの王にだまされ、
捕らわれの身となります。
彼が生きていく唯一の手段は、道化師見習いになること。
一国の跡取りとして大切に育てられてきたフロリーンにとって、
道化として生きる屈辱は耐えがたく、一度は脱走をはかりますが、
一緒に捕えられた父モンフィール国王の命を守るため、
苦しさ、虚しさをこらえて道化を演じます。

こう書くと、主人公はフロリーンのように思えますが、
この物語で一番ネックとなるのがタイトルのとおりミムスです。
ミムスは、フロリーンに対してひどい振る舞いをしたかと思えば、
時に、やさしい一面を見せます。
自分の主人である王に対しても、忠実な下僕のように振る舞っているかと思えば、
一転、王を裏切ったり、おとしめようとしているようにも見えます。
訳者は、あとがきでミムスが“ジョーカー”を連想させると述べていますが、
とても言い得た表現だと感じました。
ミムスは、味方なのか、敵なのか、善なのか、悪なのか・・・
読み進むにつれ、どんどんわからなくなるけれど、
同時に、彼に魅力を感じずにはいられません。

550ページと長い作品ですが、読みはじめると止まりませんでした。
まったく違う世界に迷いこんでしまったかのような読書体験をたのしめます。


追記:
そういえば、以前紹介した『王への手紙』→にも、道化師が登場しましたっけ。
こちらの道化も魅力的でしたよ。





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by kangaroo-books | 2010-07-22 16:09


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