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よあけ

『よあけ』  
ユリー・シュルヴィッツ=作・画 瀬田貞二=訳 福音館書店 




動くものが何もない、くろぐろとした夜。
静まりかえった湖の木の下に、おじいさんと孫が寝ていました。
やがて、そよ風がふき、湖面にさざなみが立ちます。
しだいに、もやがこもり、音が聞こえてきます。
かえるが飛び込む音、鳥がなきかわす音・・・
よあけです。
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よあけは、心を打つものです。
たとえば、キャンプの朝、一夜漬けで試験勉強をした朝。
全然風情がないけれど、徹夜で飲んでしまった朝。

わたしの印象に強く残っているのは、
学生時代に、仲間と海で見たよあけです。

数年に一回の流星群が見える夜でした。
砂浜に寝っころがって、数え切れないほどの流れ星を見た後、
海の向こうの闇がだんだんとぼわっとしてきて、
紺、紫、水色、ピンクと刻々と変わっていきました。

それは、ほんの一瞬で消えてしまう流れ星よりも、美しいものでした。
しかも、この美しいよあけが毎日くりかえされているという、おどろき。
でも、そのほとんどを、わたしは見逃しているのだなぁ。もったいないなぁと。

水墨画のような絵、ひかえめな文章。
描きすぎず、語りすぎないことで、逆に多くのことを語る絵本です。
ひんやりとした空気、静けさ、たき火の匂い、そして朝の神聖な雰囲気。
最後のページは、何度開いても、ぞくぞくするような感動をおぼえます。

★おはなし会で使う時には・・・
 5・6歳~
 おはなし会で使うには、かなり高度な本です。
 少人数の、とても落ち着いた雰囲気のおはなし会でためしてみてください。

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by kangaroo-books | 2009-07-09 20:45 | 【夏によみたい】本棚


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