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生まれてバンザイ

友人の赤ちゃんに会いに行ってきました。
この世界に生まれ出でて、5日目の女の子。

赤みがかった肌、しっかりと結んだ手
まぶしそうな目、おっぱいを必死で求める口
抱っこするのがこわいほどの軽さ、意外に力強い泣き声

なんて かわいい!

生まれたばかりの赤ちゃんって、こんなに小さかったっけ?
たった7ヶ月前、わが子もこんなだったとは・・・信じられません。
そして、たった7ヶ月前のことだというのに、新生児の小ささや、抱き心地を
すっかり忘れてしまっている自分のことも・・・信じられない思いがしたのでした。

生まれてバンザイ

『生まれてバンザイ』
俵万智
童話屋


子育てをしていると、忘れたくない瞬間に何度も出会います。
というより、忘れたくないことだらけです。

大きなおなかを抱えていた頃の気持ち、出産の時のこと、
生まれたばかりのわが子の小ささ、かわいさ、危うさ、力強さ
はじめてのだっこ、おっぱい、寝返り、ごはん
・・・まだまだ、あれもこれも。

ああ、この気持ち、この感触、まわりの景色や温度、
今、この瞬間ぜんぶを切り取ってずっとっておきたい。
そんな思いにかられるのですが、哀しいかな、
気持ちや空気は新鮮なままでは保てないものです。
もちろん覚えてはいるのですが、色褪せたり、薄れたり・・・

少しでも新鮮なうちに、日記に綴るのですが、
なぜか文字にした気持ちは、心の中の気持ちとは少しずれているのです。
少しどころか、ずいぶんとずれてしまっていることだってあります。
どうしてだろう、心とペンを持つ右手がもっと直結していればいいのに、などと
やきもきした気持ちを抱いている時に出会ったのが俵万智さんの子育て歌集でした。

これは、俵さんがお子さんをおなかに宿した頃から幼稚園卒園の頃までのアンソロジー。
はじめて読んだ時、驚きました。
これはわたしのことではないか…と
きっと、この本に出会った多くのお母さんが、わたしと同じように感じるのではないかしら。

 -腹を蹴られ なぜかわいいと思うのか よっこらしょっと 水をやる朝

 -夜泣きするおまえを抱けば 私しかいないんだよと 月に言われる
 

どれもこれも、身に覚えのある情景が思い浮かびます。
読みすすむ毎によみがえってくる記憶に、笑みも、涙もこぼれます。

そして、つかまり立ちをしだした頃からの歌は、それまでの歌とは違った笑みと、涙がこぼれます。
ああ、これからこんな日が来るのだな、と。
 
 -アルバムに 去年の夏を見ておりぬ この赤ん坊はもう どこにもいない

たった三十一文字の中に、お子さんの成長、ご自身のさまざまな思い、
その時の情景や空気までをも表現されていることに、驚き、感心し、羨ましくも思いました。
そして、大切なことを思い出させてくれたことに、感謝しました。

この本を開く度に、まるでわがことのように
過ぎし日を振り返ったり、近い未来を想像したりして、
喜んだり、切なくなったりしています。


母でいられることのしあわせ、子どもと一緒にいられることのしあわせ
それはいつも抱いているのだけれど、日常の繁雑さに追われて
見失いそうになることがあります。
そんな時、この本を開こうと思います。



そうそう、後半には恋の歌が載せられています。
こちらは、子育ての歌とはまた違った笑みがこぼれますよ。^^
# by kangaroo-books | 2011-01-17 22:50 | 【子どもと絵本を知る】本棚

12月の読書メモ

12月の読書メーター
読んだ本の数:14冊
読んだページ数:682ページ

エリーちゃんのクリスマス (世界絵本傑作シリーズ)エリーちゃんのクリスマス (世界絵本傑作シリーズ)
(再読)昨年出版されとても気に入ったのですが、クリスマスシーズンに買いのがしたので、今年購入。「にいさんといもうと」の画家チャルマーズによる1956年の作品。最近の絵本には、こういう素朴なかわいらしさは見られません。エリーちゃんたちは、クリスマスを盛大に祝うわけではないけれど、みんなでかざりつけをして、ココアを飲み、クリスマスに向けての時間をゆっくりとたのしみます。こんなクリスマスの過ごし方って、とってもいいな。
読了日:12月28日 著者:メアリー・チャルマーズ
月夜のこどもたち (講談社の翻訳絵本シリーズ)月夜のこどもたち (講談社の翻訳絵本シリーズ)
しんとした夏の夜の空気が絵本からたちのぼってくるかのよう。季節はずれに読んでしまったけれど、ページを繰っている間、気分は夏休みの子どもでした。子ども時代の幸せな時間がつめこまれた絵本です。絵はセンダック、文章は「木はいいなあ」のユードリイ(本書ではアドレーと表記)、訳は「かばくん」などの岸田衿子さん。大好きな作家さん3人による作品ですが、絶版になっていて未読でした。
読了日:12月28日 著者:ジャニス=メイ=アドレー
石の中のうずまきアンモナイト (たくさんのふしぎ傑作集)石の中のうずまきアンモナイト (たくさんのふしぎ傑作集)
著者と同じように、幼い頃に貝や木片の化石を見つけてワクワクしたものです。ずーっと昔、今自分が立っているこの場所に、見たこともない生き物たちがいたという不思議。化石ひとつで想像がぐんぐん広がります。わたしもアンモナイトは今でもどこかで生きていると思うな。
読了日:12月21日 著者:三輪 一雄
世界中のこどもたちが (からだとこころのえほん  )世界中のこどもたちが (からだとこころのえほん  )
子どもの笑顔には、空をも、海をも笑わせる力があるだろう。夢中になって遊んでいる子ども達の顔がとてもいい。
読了日:12月21日 著者:新沢としひこ
ここにも、こけが… (たくさんのふしぎ傑作集)ここにも、こけが… (たくさんのふしぎ傑作集)
足元にこんなにも美しい世界が広がっていたとは。みずみずしく、あおあおとしたコケの写真の数々に目をみはります。
読了日:12月21日 著者:越智典子
野の花えほん 秋と冬の花野の花えほん 秋と冬の花
春夏編同様、充実の内容。掲載されている植物の種類は少ないが、名前の由来、利用法、遊び方などなどひとつの植物につき様々なことが紹介されており、じっくりと楽しめる。散歩のおともに。
読了日:12月21日 著者:前田 まゆみ
鳥に魅せられた少年―鳥類研究家オーデュボンの物語 (わくわく世界の絵本)鳥に魅せられた少年―鳥類研究家オーデュボンの物語 (わくわく世界の絵本)
オーデュボンという名前は、伊坂幸太郎の小説のタイトルでしか知らなかった。鳥の渡りが2千年以上も謎のままだったとは驚き。鳥は冬の間水の中で眠っているとか、別の鳥に姿を変えているとか、月まで飛んでいっているとかいう説があったんだとか。う~ん、おもしろい。巻末のオーデュボンによる絵が美しく、ため息が出る。
読了日:12月21日 著者:ジャックリーン・デビース
それ ほんとう? (福音館創作童話シリーズ)それ ほんとう? (福音館創作童話シリーズ)
わーい、復刊ばんざい!ソフトカバーになって、表紙もかわいくなってる。旧版は持っているけれど、こっちもほしくなっちゃう。新装版では、ひとつひとつの章に「それほんとう?」の一文がついてる。旧版ではこれは書かれていなかったけれど、思わず言っちゃうんだよね。「それほんとう?」って。小学生の頃から何度となく読んで、体にしみこんでいるリズム。だーいすき。
読了日:12月13日 著者:松岡享子
どろんこのおともだちどろんこのおともだち
なんて楽しいおはなし!わたしも幼い頃、どろんこ遊びが大好きな女の子だったので、夢中になって読んでしまいました。わたしもぬいぐるみや、お人形を外に持ち出しては叱られていたなぁ。だから、どろんこのおともだちが二人もいるシャーロットがうらやましい!どろだんごではなくて、どろんこのケーキなのがしゃれてる。シャーロットの部屋が素敵!
読了日:12月13日 著者:バーバラ・マクリントック
シモンのアメリカ旅行シモンのアメリカ旅行
中表紙に、タンタンとスノーウィーとハドック船長を発見!他には誰がでてくるのかなーと目を皿のようにして隅々まで探したのですが、「かもさんおとおり」の鴨の家族と白鳥のボートの他は見つけられず。巻末を読んでみると、作家や女優、建築家などが描かれているそう。もう少しわかれば、もっと楽しめそうなんだけど、残念。
読了日:12月13日 著者:バーバラ・マクリントック
おかのうえのギリス (大型絵本)おかのうえのギリス (大型絵本)
対比と繰り返し、民話のようにおはなしは進みます。さあ、どうなるの?どんな終わりが待っているの?と期待が高まり・・・ピャー!!大満足のおしまいです。それにしても、ローソンの絵がうまい!黒一色なのに、青々とした山、鮮やかなタータンチェックなど様々な色が見えるかのようです。
読了日:12月13日 著者:マンロー・リーフ
ながいよるのおつきさま (講談社の翻訳絵本)ながいよるのおつきさま (講談社の翻訳絵本)
(再読)「上弦の月」「居待月」など日本古来の月の呼び名も美しいけれど、この本に出てくるネイティブアメリカン達がつけた名前もまた美しいものです。はるかかなたにあるけれども、なぜか身近に感じるおつきさま。昔むかしの人も、海の向こうの人もそれは同じだったのですね。大好きな絵本ですが、moonの訳語には「おつきさま」という言葉よりも「つき」という言葉を使った方がよりしっくりくる気がします。
読了日:12月13日 著者:シンシア ライラント
生まれてバンザイ生まれてバンザイ
俵万智さんの子育ての短歌を中心としたアンソロジー。子育ての喜びや、驚きをこんなふうにことばにして残せるなんて羨ましいかぎり。短歌にエッセイを添えた「たんぽぽの日々」も良かったけれど、短歌だけが綴られているこちらの方がことばが少ないせいか、より自分のことのように感じてしまいました。子育てっていいものだなぁと感じさせてくれる本。
読了日:12月12日 著者:俵 万智
キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本)キンコンカンせんそう (講談社の翻訳絵本)
ロダーリらしいユーモア。フォントが気になった。絵とおはなしにあわせて、あえてこれを選んだのだろうけれど、読みにくい・・・
読了日:12月01日 著者:ジャンニ・ロダーリ,ペフ

読書メーター

# by kangaroo-books | 2011-01-12 22:18 | -読書メモ

ひぐれのお客 ・ ひぐれのラッパ

安房直子さんのおはなしを読んだあとに心に残る感触はひとことでは表せません。
その感触をなんとか文章にしてみると・・・
例えば、ふうわりと手袋の上に舞い降りた美しい形をした雪のひとひらが、
だんだんと溶けてなくなってしまうような感じ。
うれしくて、美しくて、印象的で、物悲しい。
だからなのか、それとも冬のおはなしが多いせいか冬になると読みたくなります。


ひぐれのお客 (福音館創作童話シリーズ)  ひぐれのラッパ (福音館創作童話シリーズ)

『ひぐれのお客』
『ひぐれのラッパ』
安房直子=作
MICAO=画
福音館書店


この2冊は、昨年福音館から出たもの。
刺繍で描かれた絵も、カバーの色合いも安房さんのおはなしに合っていて素敵です。
それぞれ、短編が6つずつ。どのおはなしからも、不思議な香りが漂います。
安房さんのおはなしのおもしろいのは、あり得ないのに、あり得そうな予感がするところ。

宝石店の地下が黄泉の世界とつながっていても、
夜な夜なねずみが縫い物にやってきても、
ねこや、うさぎがしゃべりだしても、
こんなことも起きるのかもしれない・・・と思えるのです。



いちばん好きなのは「うさぎ屋のひみつ」
とびきりおいしい料理を作るうさぎの夕食宅配サービス、
うちにもやってこないかしら。
ロールキャベルツ、えびのコロッケ、とり肉のクルミソース、
白身魚のフライ、とりと野菜のシチュー・・・
食べてみたいものですが、このうさぎ、一筋縄ではいかないのですよ。


外は寒々。。。
こんな日は、ストーブのそばで安房さんの本でも読みましょうか。
うさぎ屋が、コツコツと窓をたたきに来るやもしれません。
# by kangaroo-books | 2011-01-11 18:43

もこもこもこ

バタバタとしているうちに、「メリー・クリスマス」も「あけましておめでとう」も通り過ぎ、
もうこんな時期になってしまいました。
うちにおちびさんがやってきて7ヶ月が過ぎましたが、まだまだバタバタの日々。

娘と遊ぶ時間を第一、おいしいものを作って食べる時間を第二、本を読む時間を第三にすると、
更新する時間もないし、一旦ブログをやめようかとも考えたのですが、
やはりあれこれ書きながら、本のことや、自分のこと、娘のことを振り返る時間もとても大切。
というわけで、今年もぼちりぼちりと続けていこうと思い直した次第です。
読んでくださっているみなさま、引き続きよろしくおねがいいたします。

今年の1冊目は、最近の娘のいちばんのお気に入り・・・

もこもこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)

『もこもこもこ』
谷川俊太郎=作
元永定正=絵
文研出版


サンタさんからもらって以来、ほぼ毎日読んでいます。

この絵本を読むようになって、娘ははじめて “物語” に出会ったような気がします。
たぶん彼女にとって、今まで絵本=おもちゃだったのだと思います。
絵本を開いた時も、おもちゃで遊んでいる時と同じようにキャッキャと喜んでいました。
ところが、『もこもこもこ』を読んだ時の反応はあきらかに他の本とは違いました。

「しーん」のページでは、神妙な顔
「もこ」で見せる おっ!という顔
「ぱく」では、目を丸くして、
「もぐもぐ」で、にやり
「ぽろり」では、あれ?と不思議そうな顔をして、
「ぷうっ」のところでは、唇をぶ~と鳴らして唾を飛ばすことも
「ぱちん」で毎回のように、はっ!と驚き、
「ふんわ ふんわ ふんわ」では、なぜか至福の表情
そして、また「しーん」と神妙な顔

くるくる変わる表情といったら・・・驚きました。

そういえば、図書館のおはなし会で読んだ時もそうでした。
表紙を見せた途端に、おちびちゃん達の小さなおめめが一斉に絵本にひきつけられて、
ページをめくる度にいろんな表情を見せてくれたものです。
それは、この絵本が赤ちゃんが好きな音ばかりで作られているから、
赤ちゃんにもわかりやすい色や形で描かれているからだと思っていましたが、
娘と何度も何度も読むうちに、どうやらそんな単純なことだけではないぞ、と思うようになりました。

大人が「意味がわからない」と言う(お母さん方からよくそんな意見を聞きました)
この絵本の中に、赤ちゃん達はとても楽しい物語を発見しているのでしょう。
人生ではじめて出会う物語ですね。
そういう見方をしてみると、ますますこの絵本が魅力的に思えてきます。
音、色、物語・・・
それ以外にも、子どもにしかわからない何かとてつもない魅力がつまっているのかもしれません。
# by kangaroo-books | 2011-01-10 16:41

あなのはなし

小柄で身軽なせいか寝返りしだすのがすこぶる早かった娘は、
6ヶ月の今では、コロコロコロコロと部屋中を縦横無尽にころがっています。
そんな姿を見るとつい口にしているひと言がありました。

「コロコロ、ころがって、どこ行くの?」

言いながらこのセリフどこかで聞いたことあるなぁと思っていたのですが、やっと思いだしました。
以前ストーリーテリングのために覚えたおはなしの中にでてきたセリフでした。
覚えて以来一度きりしか子ども達にはなしていなかったので、
すっかり頭の奥の引き出しにしまいこんだままになっていました。
頑張って覚えたはずなのに、ひと言が思い出せないなんて、
おいおい…と自分につっこみたくなる一方、
おはなしの中の言葉が何気なく口をついて出てきたことがうれしくて、笑みがこぼれました。
子どもはよくおはなしの中の言葉を覚えて、普段の生活の中で口にしていますよね。
わたし自身もそんな子どもでした。
それが自然にできるのは、おはなしの世界に入りこめる子どもだけの特権かと思いきや、
この年になっても同じような体験ができるとは。
これは近くに子どもがいるからこそですね。
小さな子がいる暮らしはなんと楽しいことでしょう。

『あなのはなし』
ミラン・マラリーク=作
間崎ルリ子=訳
「おはなしのろうそく4」 東京子ども図書館編より


あるところに、あなのあいた靴下がありました。
ところが、誰もそのあなを繕ってくれなかったので、
あなはどんどん大きくなって、とうとう靴下を飲み込んでしまいました。
そして、あなはぶたりと外へでかけました。
あなは途中、ドーナツとかえるとツバメとひつじに出会って、
一緒に旅をすることにしました。
やがて、夜になり彼らは森の一軒家で休むのですが、そこにおおかみがやってきて、
ドーナツもかえるもツバメもひつじも、パクリと飲み込まれてしまいました。
ところが、おおかみがあなを飲み込むと・・・

あっと驚くおしまいに、大満足のおはなしです。


ちなみに、わたしがつぶやいた「コロコロ、ころがって、どこ行くの?」は、
あながドーナツに出会ったときに言った言葉。
この問いに対して、「べつにどこへも。ただ、世の中をみたいとおもってね」と答えるドーナツさん。
わが娘も、いろんな物を見てやろうとばかりに、部屋中をコロコロコロコロところがっております。
# by kangaroo-books | 2010-12-12 21:27